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- “事務所のこれから”を考える一手としてのM&A ≪BRIDGE≫コラム Vol.21
うちの事務所、相場より高い? M&A価格交渉で後悔しないための3つの視点
こんにちは、PSR M&Aサポートサービス事務局です。
社労士事務所のM&Aにおいて、譲渡を検討される先生が真っ先に、そして最も気にされるのは「譲渡価格」です。それは、とても自然なことです。長年、寝食を忘れて顧問先に向き合い、スタッフを守り、地域に根ざして築き上げてきた事務所の価値が一体いくらになるのか。その数字は、先生のこれまでの歩みに対する、一つの「通信簿」のような意味合いも持っているからです。
士業事務所の価格評価には、不動産のような明確な公認相場が存在しません。「営業利益の〇年分」といった計算式が業界内で囁かれることはありますが、実際には、同じ売上規模の事務所であっても、最終的な提示額に数百万円、時には一千万円単位の開きが出るのが現実です。今回は、価格交渉のテーブルに着く前に、プロの視点から絶対に押さえておくべき≪3つの評価軸≫を深掘りします。
1. 「利益の額」以上に問われる「収益の質」と「顧客構成」
買い手側がM&Aの査定において最も厳しく見るのは、「過去の利益」ではなく「未来にわたっての利益の継続性」です。つまり収益の「質」が問われることになります。
例えば、特定の大型スポット案件(大型の助成金申請や人事評価・賃金規定の制度設計大改訂など)で一時的に利益が跳ね上がっている事務所は、買い手から見れば「来年以降の収益予測が立たない」と判断され、評価は控えめになります。逆に、月次の継続顧問料の比率が高く、かつ特定の顧問先(売上の20%以上を占めるなど)に依存しすぎていない分散された顧客ポートフォリオを持つ事務所は、非常に高く評価される傾向にあります。
また、「その先生でないと対応できない難解な相談」ばかりが並ぶ事務所も要注意です 。買い手は「自分たちが引き継いだ後に、誰がその業務を回せるのか」を考えます。属人性が高すぎる業務は、承継後の離脱リスク(のれん代の毀損)とみなされ、マイナス査定の要因になり得るのです。
2. IT環境と「業務の見える化」が、買収価格のプレミアムを生む
現在の社労士業界において、IT投資の遅れは致命的な価格押し下げ要因となります。買い手(特に成長意欲の高い社労士法人)は、自社のシステムと統合しやすい事務所を好みます。
「うちは長年、紙の台帳とExcelで完璧に管理しているから大丈夫」という自負があっても、買い手から見れば、それを自社のクラウドシステムへ移行させる手間(PMIコスト)は「負債」と同じです。
クラウドソフトの活用状況:電子申請の比率やチャットツールの活用度がチェックされます。
マニュアルの整備:「〇〇社の給与計算は、所長の頭の中にしかない」という状態を脱し、スタッフが自走できる仕組みがあるかが問われます。
このように「誰でも引き継げる体制」が整っている事務所は、買い手にとっての「教育コスト」や「引き継ぎリスク」を低減させるため、結果として価格にプレミアムが乗ることもあります。
3. 交渉の最終局面で「減額」されないための防衛策
どれほど表面上の利益が出ていても、DD(デューデリジェンス)の段階で予期せぬリスクが見つかれば、価格は一気に崩れます。最も多いのが、事務所自身の労務管理の不備です。
「社労士事務所なのに自社の未払い残業代がある」、「雇用契約書が最新の法改正に対応していない」。
これらは、買い手の信頼を著しく損なうだけでなく、法的なリスク(隠れた負債)として、算出された企業価値からダイレクトに差し引かれます。まさに“紺屋の白袴”を正すことが、希望価格を守るための最大の防衛策です。顧問契約についても、口約束や古い書式のままで放置せず、最新の委託契約書を整備しておくことで、将来の収益権を法的に裏付けることができます。
納得感のあるM&Aとは、単に高値で売ることではありません。譲渡後の顧問先が守られ、スタッフが輝き続け、そして何より先生ご自身が「この相手に託して良かった」と思える合意に至ることです。
「自分の事務所が売却対象になるのか?」と不安な先生も多いはずです。
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