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106万円の壁の撤廃などの被用者保険の適用拡大、在老の見直し、遺族年金の見直しなどを盛り込んだ年金制度改正法案 国会に提出

令和7年5月16日、「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案」が閣議決定され、国会に提出されました。これは、今国会に提出されるのか否かが話題になっていた年金制度改正法案です。

その概要は、次のとおりです。

Ⅰ 働き方に中立的で、ライフスタイルの多様化等を踏まえた制度を構築するとともに、高齢期における生活の安定及び所得再分配機能の強化を図るための公的年金制度の見直し

1 被用者保険の適用拡大等

① 短時間労働者の適用要件のうち、賃金要件を撤廃するとともに、企業規模要件を令和9年10月1日から令和17年10月1日までの間に段階的に撤廃する。
② 常時5人以上を使用する個人事業所の非適用業種を解消し、被用者保険の適用事業所とする。※ 既存事業所は、経過措置として当分の間適用しない。
③ 適用拡大に伴い、保険料負担割合を変更することで労働者の保険料負担を軽減できることとし、労使折半を超えて事業主が負担した保険料を制度的に支援する。

2 在職老齢年金制度の見直し

一定の収入のある厚生年金受給権者が対象の在職老齢年金制度について、支給停止となる収入基準額を50万円(令和6年度価格)から62万円に引き上げる。

3 遺族年金の見直し

① 遺族厚生年金の男女差解消のため、18歳未満の子のない20~50代の配偶者を原則5年の有期給付の対象とし、60歳未満の男性を新たに支給対象とする。
これに伴う配慮措置等として、5年経過後の給付の継続、死亡分割制度及び有期給付加算の新設、収入要件の廃止、中高齢寡婦加算の段階的見直しを行う。
② 子に支給する遺族基礎年金について、遺族基礎年金の受給権を有さない父母と生計を同じくすることによる支給停止に係る規定を見直す。

4 厚生年金保険等の標準報酬月額の上限の段階的引上げ

標準報酬月額の上限について、負担能力に応じた負担を求め、将来の給付を充実する観点から、その上限額を65万円から75万円に段階的に引き上げる(※)とともに、最高等級の者が被保険者全体に占める割合に基づき改定できるルールを導入する。
※68万円→71万円→75万円に段階的に引き上げる。

 

Ⅱ 私的年金制度の見直し

① 個人型確定拠出年金の加入可能年齢の上限を70歳未満に引き上げる。
② 企業年金の運用の見える化(情報開示)として厚生労働省が情報を集約し公表することとする。


Ⅲ その他

① 子のある年金受給者の保障を強化する観点から子に係る加算額の引上げ等を行いつつ、老齢厚生年金の配偶者加給年金の額を見直す。
② 再入国の許可を受けて出国した外国人について、当該許可の有効期間内は脱退一時金を請求できないこととする。
③ 令和2年改正法附則による検討を引き続き行うに際して社会経済情勢の変化を見極めるため、報酬比例部分のマクロ経済スライドによる給付調整を、配慮措置を講じた上で次期財政検証の翌年度まで継続する。

 

<施行期日>

令和8年4月1日(ただし、Ⅲ③は公布日、Ⅰ1③は令和8年10月1日、Ⅰ4(68万円へ引上げ)は令和9年9月1日、Ⅰ1①(企業規模要件)は令和9年10月1日、Ⅰ1①(賃金要件)・Ⅱ①は公布から3年以内の政令で定める日、Ⅰ4(71万円へ引上げ)は令和10年9月1日、Ⅰ3・Ⅲ①は令和10年4月1日、Ⅰ4(75万円へ引上げ)は令和11年9月1日、Ⅰ1②は令和11年10月1日、Ⅲ②は公布から4年以内の政令で定める日、Ⅱ②は公布から5年以内の政令で定める日)


この改正法案については、当初は盛り込まれていた「いわゆる基礎年金の底上げ」が削除されていることなどで、反発している野党もあり、審議が難航することが予想されています。今後の動向に注目です。詳しくは、こちらをご覧ください。

<社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律案>
・概要:https://www.mhlw.go.jp/content/001488402.pdf
・法律案要綱:https://www.mhlw.go.jp/content/001488225.pdf
・法律案新旧対照条文:https://www.mhlw.go.jp/content/001488227.pdf

なお、厚生労働省は、この改正法案に関する専用のページを設けて周知を図っています。こちらをご確認ください。

<年金制度改正法案を国会に提出しました>
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00017.html

※無断転載を禁じます

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