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人的資本経営と感情:エンゲージメントと幸福を追求する組織へ②

2023/08/04

コラム

「人的資本経営」は、従業員を単なる労働力としてではなく、企業に価値をもたらす「資本」と位置付け、その人の力を最大限に引き出すことで企業の長期的な発展を目指す経営の在り方です。具体的には、コンプライアンス、ダイバーシティ、組織文化、エンゲージメント、健康・安全・幸福、採用、人事異動、離職、スキルと能力、労働力の確保などのカテゴリが、人的資本経営で重要視されるポイントとして取り上げられます。

本コラムでは、これらのポイントの中で特にウェルビーイングやエンゲージメントが働く人の力を引き出すエンゲージメントや幸福に関連する「感情」に焦点を当てて考察していきます。 

ウェルビーイングやエンゲージメントが働く人の力を引き出す

 前回のコラム①では、人的資本経営の中の特にエンゲージメントや幸福に関連する「感情」について考察しました。今回のコラムでは具体的にエンゲージメントを高める活動をしている企業事例をご紹介します。

 人的資本経営は、働く人の力を最大限に引き出すことで企業の長期的な発展を目指す経営の在り方です。そのためには、ウェルビーイング(組織内での充実感や生活満足度による幸福度)や、エンゲージメント(従業員が仕事に対する情熱や献身を示す度合いで、組織に対するコミットメントや業績向上につながるといわれるもの)が重要です。ウェルビーイングやエンゲージメントが高いことで、新たな発想力や生産性高い仕事をすることにつながるでしょう。

 では、ウェルビーイングやエンゲージメントを高める方法はあるのでしょうか。
 次にご紹介する「自然豊かな場所で農業体験の実施を提供している企業」がヒントになるかもしれません。 

農業体験の実施を提供している事例

 こちらの企業では、ふだんはオフィスソリューション販売を行われており、多くの企業経営者とのやりとりから、「雇用している人の悩み」を聞くことが多くありました。例えば、採用難、チームワーク不足、個人主義、組織目標への一体感の欠如、メンタル不調、早期退職などです。
 根本的な解決策を模索する中で、長年の農業支援活動からヒントを得て、「仲間と共に自然に触れ合い、協力して作業を行う」ことが悩みの解決に効果があると考え「農業体験」の機会を提供しています。

<農業体験がもたらす効果>

  • 自然に囲まれて心が解放され、リフレッシュできる
  • チーム活動で、普段見られない一面を見て親しくなりやすい
  • ハプニングが起こっても、助け合いながらチームワークを向上させる
  • お米作りを通じて感謝の心を育み、人生の満足度が向上する

 筆者も農業体験に参加しました。東京から1時間で行ける茨城県の農家にお邪魔し、農作業やバーベキューを楽しみました。初対面の人も多くいましたが、天候に恵まれ自然豊かな場所ですぐに打ち解けることができました。のどかな田園風景の中、穏やかな風と豊かな自然の中で食べるご飯は格別においしく感じました。仕事上で親しい人たちとも一緒に参加し、これまで知らなかったプライベートの話を聞けたり、新たな一面を見るけることができました。家族連れも多く参加しており、子供たちは田んぼの蛙をつかまえたり、裸足になって泥んこになって大喜び。大人たちは、子供たちを分け隔てなく面倒を見ていました。飲み物がなくなると、誰かが全員分の飲み物を買い出しに行き配ってくれました。農家さんが作ってくれた赤飯を皆で分け合い、美味しさに感動しながら食べ、食事が終わると皆で協力して後片付け。指示者がいなくても、「皆が快適に過ごせるように」という意識が共有され、笑顔と幸福感に満ちた空間が生まれました。

 この体験は、ウェルビーイングを感じつつエンゲージメントが向上する素晴らしい機会でした。ウェルビーイングやエンゲージメントは感情的なものであり、個人差がありますので、これらを向上させる方法は多岐にわたります。今回は、一例としてご紹介しました。

<採用への効果>

 こういった活動を広報に活用している企業も存在します。SNSなどで「従業員全員で農業体験を楽しんだ」といった投稿を通じて、イベントやウェルビーイングに対する取り組みを可視化し、発信しています。これにより、採用候補者の中には、このような取り組みに好感を持って応募するきっかけになることもあります。

 コラム①で、求職者が転職先で最も重視する要素として「人間関係の良さ」を紹介しました。人間関係を向上させるための仕掛けとして、自然豊かな環境で農作業に取り組むのも素晴らしい事例だと思いましたので、ここで紹介いたしました。

ウェルビーイングやエンゲージメントを向上させる事例

 この他にも、様々な企業では、ウェルビーイングやエンゲージメントを向上させるための多様な取り組みを行っています。以下にいくつかの事例をご紹介いたします。

 1.フレックスタイム制度導入: 労働時間の柔軟性をもたせる
 2.リモートワーク: 働く場所の柔軟性にし、従業員が自分に合った環境で働けるようにする
 3.社内研修・教育プログラムの充実: 従業員のスキルや知識を向上させるための研修や教育プログラムを提供し、キャリアの成長をサポート
 4.瞑想トレーニングやマインドフルネス研修を実施し、ストレスの軽減、集中力の向上、情緒安定性の強化
 5.社員表彰制度: 優れた業績や取り組みを表彰し、従業員のモチベーションやエンゲージメントを高める仕組みを導入
 6.社内コミュニケーションの強化: 定期的なフィードバックやオープンなコミュニケーションを促進
 7.健康促進プログラム: 企業内で健康に関するイベントやキャンペーンを実施し、従業員の健康意識を高める

 最後に、皆様へ質問をさせていただき、このコラムを締めくくりたいと思います。

 「御社が人的資本経営を推進する際、どのような点を重視していますか?その点を強化するための取り組みや戦略は何ですか?そして、それらをどのように伝えていますか?」

第1回記事「人的資本経営と感情:エンゲージメントと幸福を追求する組織へ①」はこちら 

執筆

米澤裕美(よねざわ ひろみ)氏
米澤社労士事務所 代表 特定社会保険労務士


ISO 30414 リードコンサルタント・(一社)日本テレワーク協会客員研究員
(一社)ブランド・マネージャー認定協会ブランド・マネージャー2 級・ ㈱ビジネス・ブレークスルー や東京理科大学オープンキャンパス等でブランド概論受講
著書 開業当初の士業のためのセルフブランディング 他多数
事務所ホームページ https://office-roumu1.com

<終了しました>8月31日(木)「働き方ブランディングから始める人的資本経営」セミナー

本コラムの執筆者であり、『士業のためのセルフブランディング』などの著作を持つ特定社会保険労務士・働き方ブランドコンサルタントの米澤裕美先生によるセミナーを開催します! 

米澤先生は、ブランド・マネジャーやブランド概論について複数の場で学び、その知識やスキルなどを生かし、現在は、企業の社内外ブランディング支援もしているブランディングのスペシャリストでもあります。

本セミナーは「優秀な人材を確保・定着させたい」「ブレのない一貫性をもった企業ブランドを作っていきたい」企業様必見! 特に中小企業を顧問先に持つ先生方に、これからの人材獲得競争に打ち勝つための戦略として、ぜひ知っていただきたい内容となっております。奮ってご参加ください。

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