2020/09/25(金) コラム
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選択制DC導入にブレーキ
選択制DCとは、基本給の一部を減額し、同額を企業型DCの掛金として拠出するか、給与として受け取るかを従業員に選択させる制度です。事業主が掛金を拠出する企業型DCのかたちをとりますが、退職金制度の一部として企業年金制度ではなく、節税メリットや社会保険料負担の軽減を目的として導入されるものです。
下図は企業型DCの推移ですが、退職金制度や企業年金制度からの移行は全体の約4割で頭打ちになっている一方、「新規」の導入は増加テンポが加速し、全体の6割に達しています。そして、正確な統計はありませんが、この「新規」のうち、多くが選択制DCと推測されます。
選択制DCの大きな魅力は、「事業主にとっての社会保険料負担の軽減」効果です。企業型DCの掛金として拠出することを選択した従業員の給与は、その分下がり、標準報酬月額のランクが下がる可能性もあります。それにより労働保険料や社会保険料が下がります。少子高齢化が急速に進むなか、企業の社会保険料負担は大きくなっており、その削減効果がある選択制DCは、企業にとって魅力的に思えます。金融機関も、退職金制度としての企業型DCの導入が頭打ちになるなか、選択制DCを積極的に提案してきたことも増加の背景にあると言えましょう。
しかし、こうした動きに対し、待ったがかけられました。
社会保障審議会企業年金・個人年金部会では複数の委員から、選択制DCを導入した場合、従業員の社会保険・雇用保険等の給付額に影響する可能性を問題とする意見が出されました。それを受け、2020年10月から規約の承認基準が改正され、社会保険・雇用保険等の給付額に影響する可能性を従業員に正確に説明していること、が承認要件に加わりました。
これまでも、従業員への説明は行なわれてきたと思いますが、より正確な説明が求められることで、選択制DC導入のハードルは高くなり、今後急ブレーキがかかるものと思われます。
(中小企業では、選択制DCに替わって、iDeCoプラスが検討されるものと思われます)
(出所)第14回社会保障審議会企業年金・個人年金部会 参考資料1より抜粋
執筆者
浦嶋 良日留(うらしま よしひと)氏
明治安田生命保険相互会社 法人営業企画部
日本証券アナリスト協会検定会員、DCプランナー1級試験合格、消費生活アドバイザー、日本年金学会会員
1962年大阪生まれ、1986年:神戸大学経営学部卒業、明治生命(現:明治安田生命)入社、その後、厚生年金基金の設立・保全業務(7年)、マクロ経済・金融市場の調査(経済企画庁出向含む)(8年)、企業年金に係る商品・企画(9年)、年金コンサルティング(4年)、DC運営管理業務(3年)、法人営業(2年)を経て、現在、法人営業企画部 審議役(団体年金企画)、日本レコードキーピングネットワーク㈱ 社外取締役。
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