第9回 森本社会保険労務士事務所 森本裕先生
今回は、和歌山県で開業されている森本裕先生に、東京にいらしたついでに、弊社まで来て頂きました! 午前中にお時間を頂いたのですが、そのために5時起きだったとのこと。
お忙しいなか、ありがとうございました!
森本先生には今回初めてお会いしましたが、非常に芯が強く、行動力と情熱のある方でした。地方で開業していると、何かに特化するわけではなく、色々な問題に柔軟に対応していかないといけない、というお話でしたが、普段から、お客さんの話をしっかり聴き、ニーズを引き出し、最適な提案をされているのだろうな、と感じられる魅力的な方でした。私も「社労士」とはどういう姿勢で仕事をするべきか、学ばせてもらいました。
今回は、事務所に伺ったわけではないので、事務所の様子は写真だけ頂きました。自宅開業→御坊市→和歌山市と、少しずつ事務所を移転し、事業を拡大していかれているそうです。
【事務所の外観】

【事務所内での面談の様子】

インタビューは、ブレインの応接室でさせて頂きました。

森本先生は、平成5年に社労士試験に合格し、平成11年に開業され、現在11年目ということですが、社労士になる前は何をされていたのですか?
大学を卒業後、住友商事の子会社の繊維貿易会社に勤めました。大学で中国語を学んだのもあって。ただ、商社だからなのか、非常に忙しく、ひっきりなしに掛かってくる電話などの対応に追われていました。中国は時差で日本より1時間遅れているのですが、その中国との電話などの連絡が終わってから、事務仕事をするので、毎日21時や22時まで働くのが当たり前でした。
しかも当時は、女性は結婚退職するのが当たり前で、結婚後、職場に残っている先輩は誰もいませんでした。その事実を考えたとき、このままこうしていていいのだろうかという疑問を感じ、通勤電車で資格の勉強を始めました。
それで、社労士の勉強を?
いえ、最初は簿記の勉強をしました。数字が好きだったので。簿記は1級まで取りました。
その後、商社をやめ、第3セクターの嘱託社員になるのですが、商社と違って非常に仕事が楽だったので、税理士の勉強を始めました。そのまま、税理士か公認会計士の資格を目指そうと思ったのですが、その頃、ちょうど結婚もして、将来家庭と両立できるような資格は何だろうと考え、結局、社労士の資格を取ることにしました。当時は開業しようとは全く考えていませんでした。
でも、6年経って、開業することになるのですよね。どうしてですか?
結婚後少しして、子どもができたので、仕事をやめてしばらく子育てに専念しました。ですが、離婚することになり、それまで住んでいた奈良から実家のある和歌山に戻りました。
最初は子どもを預けてパートに出ようと思っていましたが、地方なので保育園は2歳からしか預けられるところがなく、パートの仕事もぴんとくるものがなかったのです。そんなとき、ふと、そういえば社労士の資格を持っているなぁ、それを活かせないかな、と思ったんですね。
お子さんがまだ小さいのに、開業するというのはすごいですね。
そうですね。下の子はまだ0歳でしたから、車で営業するときも、隣にチャイルドシートをつけていました。一番目に顧問先になってくれた企業などは、一緒に子どもの成長を見て、喜んでくれました。そういう支えもあって、やってこれました。
ただ、母の助けはあっても、本当に毎日大変でした。家に帰って、子どもの世話を終えると、バタンと倒れて意識がないような状態で。気付いたらお風呂の湯船で寝ていたり。しかも子どもは小さい頃、月に2回も3回も体調を崩すので、病院に連れて行く必要が出てきたりします。そういうときは、これから先やっていけるのだろうかと本当に不安でした。
子どもが小学校に上がってようやく、「今年やってこれたから来年もやっていける。」と思えるようになってきたのです。子育てと仕事の両立というのは、時間の経過が解決してくれるものだと思いました。「この状況が続いたらどうしよう」と思っていても、子どもはいつの間にかたくましくなって、毎月2、3回も病院に行っていたのが、いつの間にか年に1、2回になり、今年は下の子も中学生になったので、部活を始めて帰りも遅くなって……振り返ると、無我夢中でやっている間に、大変な時期は過ぎ去っていたという感じですね。
頭で考えている暇もないという感じなのでしょうね。今、子育てをしながら開業している女性の方にアドバイスなどありますか?
先ほども言ったように、時間が解決してくれます。
また、子どもは親が思うほど「やわ」じゃありません。自ら育つ力を持っています。必要な目配り、気くばりをして、あとは自然に伸びるのを見守るだけです。私は逆に子どもに育てられたと思っています。
そうはいっても、当時は悩みました。子どもがいなければ、もっと勉強も営業もできるのではと思いました。競争相手は、子育てなどのない男性の社労士ですから。ただ、いつも「今、自分に一番大切なのは何か?」を考えるようにしていました。そして、いつもいくら仕事が順調でも家庭に幸せがなければ意味がないという結論に達しました。
開業してすぐは、まずどんなふうにして仕事を取っていかれたのですか?
開業して先ず、支部長さんに挨拶に行きました。その支部長さんは、行政書士とダルブライセンスで古くからされている先生だったのですが、その方に、「うちは顧問先も多いし、助成金など新しい仕事を始める余裕がない。始めのうちは、そういう助成金の仕事などからやってみたらどうだ」と言われました。
なるほどと思い、ハローワークに求人を出している企業に、助成金のDMを送りました。そこからお客さんが取れていきました。10年前は助成金バブルでしたしね。7年ほど前には介護保険が始まり、介護関係の助成金も出てきたので、介護のフランチャイズをしている企業の助成金の手続などで東京、大阪、四国でも仕事をしました。 その結果、ブログなどにも書いているのですが、気付いたら、受けた助成金の総額が1億円を超えていて、それって意外と売りにできるかもしれないと思い、最近はアピールに使っています。
DMで何件かお客さんがとれたあとは、お客さんがお客さんを紹介してくれたり、お客さんに紹介してもらった税理士さんや保険代理店の方と一緒にタイアップするようになったりしました。
波はありましたが、おかげさまで順調にきています。
今は、どういった仕事が多いのですか?
東京などでは何かひとつのことに特化された先生も多いと思いますが、地方は企業の数も少ないので、「どんなことにも柔軟に対応する」という姿勢が必要になってきます。ですので、特にこれに力を入れています、というものはないです。
社会保険の手続や給与計算はもちろんやりますが、就業規則を作ったり、賃金の設計をしたり、年金の相談に乗ったり、本当に色々です。
今多いのは、労務関係の相談や、就業規則や賃金も含めた「しくみ作り」をしている時間です。
しくみ作りというのはコンサルということですか?
コンサルと言うとちょっと大げさかもしれません。
私は顧問先の企業ごとに、毎年「テーマ」を設定するようにしています。たとえば法律で定年年齢の引き上げが決まったと言っても、30代ばかりの会社には、ほとんど関係ありませんから、規定だけ見直すだけで充分です。でも、会社が成長していって、50代が多くなったら、再雇用制度などについても真剣に考えて、従業員にも説明していく必要が出てきます。
そのように、企業ごとに今いるステージは違っていますし、ステージが変わると問題やニーズも変わってきます。そういうニーズに合わせて提案をしています。
小さな会社だと、たとえ人事の担当の方がいても、その方も色々な仕事を抱えているので、一年間ずっと人事制度構築に専念する、などということはできません。ですから、会社の方の話を聞いて、やらなくてはいけないことに優先順位をつけて、無理のない範囲で、毎年やることを決めて、提案していっているのです。そうすることで、私の関わる会社が、毎年少しずつでもステップアップしていってくれたらいいな、と思っています。
士業の場合、どうしても「法律がこう変わるから、ここを整備しましょう」など、どこか押しつけた提案になってしまいがちですが、会社の方と一緒に毎年テーマを決めるというのはいいですね。
そうですね。相手の企業のためにならなければ、意味がないことなので。
ところで、先ほど、お客さんからお客さんを紹介されたりするというお話を伺いましたが、大体、どのような案件での紹介が多いのですか?
助成金と就業規則が多いです。最近は、就業規則を作りたいとか、ずっと放ってある就業規則が気になっているという問い合わせが増えてきた気がしますね。小さい会社ですと、「就業規則」という言葉は出てこなくても、「労働条件をはっきりさせておきたい」とか「賃金の仕組みをきちんと見える形にしておきたい」とか、そういった話が多いです。労使トラブルが増えてきているので、サービス残業問題を含め、労務管理について気にされている経営者が増えていると感じます。
「就業規則を見直す」とか分かりやすい言葉になっていなくても、来てもらいたいというからには何かあるはずで、それを引き出すのも社労士の仕事ですよね。
就業規則まで行かなくても、「人を雇うとき、一応、条件を伝えたほうがいいと思うんだけど、どうしたらいいんだ?」というような質問もあります。小さい会社の場合は無理して就業規則を作るより、まずは雇用契約書の作り方を指導するということから入ることも必要ですね。
今、話をしていても、先生は上手くニーズを引き出して、最適な提案をしてくれそうだなと感じます。
先生は今、お1人で仕事をされているということですが、今後、従業員を雇って、事務所を大きくしようということは考えていらっしゃいますか?
そうですね。代行部分はスタッフかアウトソーシングの活用かと思っているのですが。
現在も、給与計算や年末調整の部分の一部を、提携先の税理士事務所に頼んでいます。和歌山の先輩社労士で、人を雇わず3000万円以上の売上を上げている先生がいます。もちろんうまくアウトソーシングされていますが、非常に自由人で、自分に何かあったときの体制をつくっておくことができれば、そういうスタイルもいいかなと思っています。
私自身、お客さんと会うことが好きなので、正直なところ雇用については模索中です。
森本先生が、人と会うこと、特に社長さんと会うことが好きだというのは、ブログを見せていただいても分かりますね。あの、タイプわけがいいですね。
ありがとうございます。ブログのインタビューは楽しくやっています。タイプわけは和歌山らしくある方の意見をヒントに私が考えたものですが、評判はいいですよ(笑) 色々な企業を見てきて思うのですが、企業には必ずなにか「キラリと光るもの」があって、だから会社として成り立っているのだと思います。そして、社労士や士業というのは、企業がその「キラリと光るもの」に専念できるようにするためのバックサポーターだと思います。社長が、労務リスクの心配などしていてはいけないと思うんですよね。そういう部分は自分がしっかり守りますから、社長は本来やるべきことをやってくださいって、送り出す感じです。
いいですね。素敵です。
社労士の先生にも色々なタイプの方がいると思いますけれど、基本的に士業の先生というのは、本を読んだり、コツコツ勉強ができるタイプですよね。私の個人的な考えですが、士業と会社の社長は違う人種だと思うのです。私は本を読んで、法改正の情報を勉強したりできますが、多くの社長はそういうことは苦手ですよね。(笑)でも、それ以外のところに力がある。だったら、そこに力を注いでもらいたいなと思うのです。
あぁ、なんか分かるような気がします。北村のように、士業であって士業でないような人もいますけれど(笑)
ところで森本先生は1年半ほど前からPSRに入って下さっていると思うのですが、PSRはどのように活用されているのですか?
セミナーなども興味のあるものをたくさんされているので、行きたいとは思うのですが、なかなか和歌山からだと参加できずにいます。その代わり、DVDは結構色々購入させて頂いています。
地方にいると、東京より情報が遅いのですが、例えば周りの会社がメンタルの問題についてよく話をしているなと思ったら、もうブレインさんではDVDを出されているので、それを買えばすぐ勉強できる、という感じでしょうか。
逆にPSRの商品を見れば、これから地方で話題になりそうなものが先に分かりますよね。
この間は、名古屋の後藤先生の労務リスク対策のDVDを見させて頂きましたし、それぞれの分野に強い社労士の先生が話をして下さっているので、とても勉強になります。
ありがとうございます。では、最後に、開業間もない方などに何かアドバイスがありましたら、お願いします。
自信を持つことだと思います。実績がないことを不安に思わないこと。
私もはじめのうちは不安でしたが、先輩の先生に言われました。「大事なのは、お客さんをとるところと、お金をもらうところ。その間にある作業は、誰でもできますから」と。確かに仕事をとってしまえば、書類を書くなどの仕事は、案外できてしまいます。 私も開業してもう11年目ですが、それでも法律は毎年変わるし、助成金も新しいものができますから、「はじめてのこと」は、決してなくなりません。ですから、真っ白なところへのチャレンジを恐れないことだと思います。
あと、仲間作りは大切です。仕事というのは1人だけでできるものではありません。同業、異業種、ともかく広く仲間を作っておくことが大切です。人は財産です。
本当に、そうですね。
本日は和歌山から来ていただき、ありがとうございました。「自分は裏方」といわれている森本先生にも、充分、「キラリと光るもの」を感じました!
これからもご活躍下さい!
【2010年10月】
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