第7回 松山純子社会保険労務士事務所 松山純子先生
今回は、通常の顧問業務に加え、障害年金請求の仕事や創業支援にも力を入れていらっしゃる中野の松山純子先生にお話を伺いました。社労士になる前は障害者の施設で働かれていたので、障害を持った方と接することにもともと違和感はなかったといわれる松山先生。思わず、いろいろなことを相談してしまいたくなってしまう物腰が柔らかく、笑顔の似合う先生です。でも、お話を聞いていると、しっかりとした芯を感じられました。
松山先生の事務所は中野駅のすぐ目の前、「中野サンプラザ」のなかにあります。東京に住んでいる人には、中野サンプラザをご存知の方も多いと思いますが、通常は、ホールやホテルのイメージですから、なかに会社が入っているということを知っている方は少ないのではないでしょうか。私もびっくりしました。
でも、中野サンプラザの9階には、51室のオフィスが入っている「オフィス街」があります。
受付には美しい女性が2人いらっしゃいますし、応接室は展望が良いし、オフィスの空間もおしゃれで、素敵でした。

松山先生の事務所内部はこんな感じです!
手前にもうひとつ机があり、スタッフの女性が1人働いていらっしゃいました。
松山先生の机の横の棚は、障害年金関係の本や資料がぎっしりで、逆にスタッフの方の机の横は、就業規則の本など、障害年金以外の本や資料で埋められていました。

インタビューは、51のオフィスが使える会議室のなかから、今回は、「一番いい部屋」を予約してもらいました!
意外と中野には高いビルがないようで、見晴らしが非常にいいです。

松山先生は、社労士になる前、社会福祉法人で働かれていたということなのですが、具体的にどんなことをされていたのですか?
人事総務が主な仕事です。給与計算や就業規則の整備、助成金の申請などです。700人ほどいる法人だったのですが、そのうち350人は障害を持った方でしたから、もらえる助成金もいろいろありました。
ハローワークが窓口になっている「特定求職者雇用開発助成金」が有名ですが、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構の助成金も使えます。たとえば、身体障害者が働きやすいように扉を自動ドアにしたり、スロープをつけるなど会社のリフォームするとその金額の一部が補助されたり、障害者の人が車で通勤できるように会社が駐車場を用意するとその4分の3がもらえたり、障害者に援助スタッフをつけると援助者に対する助成金がもらえたりします(援助する人の名前の登録は必要ですが、援助スタッフも普通に仕事ができます)。
障害者雇用の助成金は色々とあるのですね。
社労士を取ろうと思ったのは、そちらの施設で働かれていたときですか?
そうです。
法律の改正について調べておいてと言われても、就業規則を見直してと言われても、意味が良く分からない状態で、これは社労士の勉強をしないとまずいぞ、と思ったのがきっかけです。
ただそのときには開業しようとはまったく考えていませんでした。
それが、開業に変わったのはどうしてですか?
社会福祉法人では14年ほど働いたのですが、最後のほうは体を壊し、一時期休職していました。そして結局、仕事をやめることになったとき、社労士の資格を使って独立しようかなという気持ちになりました。
それで、平成18年に登録して、自宅で開業しました。
開業してからはどうでしたか?
普通、社労士事務所の経験があるわけでもなく、コネもなければ、開業してすぐに仕事があることはないと思うのですが、私の場合は非常に恵まれていたことに、「0からのスタート」ではなく、「1からのスタート」でした。
仕事をやめて、「開業しようかな」と思っていたとき、施設の頃の上司で、私より先に退職して会社を立ち上げていた方から、「総務の人を募集しているのだけれど、うちの会社に来ないか」と誘われました。そのとき、「社労士の資格を取ったので、顧問になるというのはどうですか?」と聞いたら、「いいよ」ということで、めでたく、1件目の顧問先になってもらったのです。
「0」と「1」は大きな差です。初めにこの1件があったことが、心の支えにもなりましたし、そこの社長は元上司ということで、知り合いですから、気持ちが楽でした。
それはよかったですね。でも、会社に誘われたというのは、やはり松山先生の人柄ですよね。
その後、2件目以降はどうやって営業などしていかれたのですか?
開業2か月目くらいで、他士業と組んで「創業支援」をするということを始めました。まず、他士業の多い交流会などに行って、仲間を作りました。
やり始めてから気付いたのですが、他士業と一緒に活動すると、他の人はみんな自分の営業マンになってくれるのですね。もちろん、私も他のみんなの営業マンなんですけれど。1人で開業して始めるとき、この、「自分を営業してくれる人をどうやって増やすか」という視点は大切です。
そのとき一緒にやっていたのは、みんな開業間もない人たちで、それもよかったです。知識や経験は先輩方に負けるかもしれないけれど、同じ方向を見て走れたので、楽しかったです。
他士業と組むのは、お客さんにとってもサービスになりますよね。
創業の助成金の相談にいらした方に、「税理士はもうお決まりですか?」と聞いたり、株式会社にするのであれば、司法書士を紹介したり。逆に、司法書士が登記に来たお客さんに「社会保険の新規適用が必要ですから、社労士を紹介しますね」と言うこともあるわけですよね。私は飛び込み営業もDMもしたことはありません。
なかなか仕事を知らない人に頼む人は少ないと思います。他士業からの紹介なら、そのお客さんにとって自分は、良く知っている士業の知り合いなので、ほとんど契約は成立します。
創業支援はよさそうですね。
そうですね。それでしばらく顧問先を増やしていきました。ただあるとき、20年くらい社労士をしている先輩に言われました。顧問先が創業間もない会社ばかりだと、危ないよ、と。確かに、創業しても残念ながら潰れてしまう会社も多くあります。また、創業間もない企業からはなかなか適正価格の顧問料などが取れない、ということもありました。
このアドバイスを早いうちにもらえたのは良かったですね。
ところで、松山先生は「障害年金」をメインに活動されているというイメージがありますが、「障害年金」をアピールし始めたのは、最近ですか?
ホームページやブログで「障害年金」を前面に出すということは、開業当時はしていませんでしたが、それでも開業したときから名刺を渡すときに「障害年金もやっています」と一言添えることはしていました。だから仕事をください、とか、だからどうしてください、いうことではなく、ただ、伝えていきたかったのです。
障害年金を業務に選ばれたのは、やはり、障害者の多く働く施設での経験が大きいのですか?
そうですね。前の施設で働いていたときは、既に障害手帳を持って、障害年金ももらっている方がほとんどでしたので、障害年金を請求するという業務をしたことはありませんでした。でも、身近でたくさん障害者を見てきました。
障害者のなかには、「学生の任意加入期間だったから、保険料を払っていなかったけれど、その時期に障害者になってしまったので無年金」という人も、「保険料を払っていなかったけれど20歳前だったから、20歳前障害を認められ、年金をもらえている人」もいます。それから、労災で障害を負ってしまったので、労災の年金も、厚生年金ももらえているという人もいます。
無年金の人は、仕事を休むと収入がなくなるため、無理して働き、さらに症状を悪化させてしまうことも多くあります。逆に、年金をもらえている人は、少し体調が悪ければ、自分の体調に合わせて休めます。
一言で「障害者」と言っても、そこには大きな差があるのです。その差を痛感したときに感じたのが、やはり、「障害年金」の大切さだったのです。
確かに、障害を持った人にとって、障害年金があるかないかは、人生を左右する問題ですよね。
そうなんです。でもまだ、障害を持った人のなかにも、障害年金をもらえるということを知らない人がたくさんいます。病院の先生にも障害年金をしっかり分かっている人は少数です。
もっと理解してくれる人が増えるといいですね。
そう思います。
障害年金の知識を広めるのも社労士の仕事だと思いますし、障害年金の仕事は、社労士だからできる仕事です。だから、これは絶対、やらなくてはいけない、と私は思ったのです。
障害年金の仕事をしようと思ったとき、既に障害年金の仕事をされている先生に声をかけ、自主研究会にも登録しました。
松山先生の初めての障害年金の仕事はどんなものだったのですか?
初めて障害年金の問い合わせが来たのは、開業後6ヶ月くらいのときでした。障害年金がもらえることになったのですが、そのとき、「これで年が越せます」と言われました。
障害年金の仕事は、そういう、その人の人生や生活に密接に関わることです。
よく、仕事をするのは「ありがとう」を集めるため、と言う人がいます。確かに感謝されると嬉しいです。でも、私が障害年金の仕事をしているのは、感謝されて嬉しい、という感覚とは少し違うように思います。
たとえば、障害年金のことを知らなかった人が、年金のことを知って、私の事務所に来てくれる。年金がもらえることになれば、これから一生、その人のもとに、所得保障になる年金が届く。そう感じるとき、「ほっとする」という言葉が一番、いいでしょうか。障害年金の仕事を始めてすぐは、人の人生を請け負う怖さを感じました。でも今は、そうやって誰かの人生の一部に確かに関わらせてもらった、自分の仕事がその人のこれからの一生の一部になっていく、ということが、すごいことだと思い、本当にこの仕事ができてよかった、と思うのです。
社労士になって良かったことは、私には、「障害年金の仕事ができること」、そのひとつです。
素晴らしいですね。
ただ、障害年金の仕事は、大変なこともたくさんあります。私も、「これは社労士の範疇を超えているな」ということもよくします。うつ病の人の話を2時間、3時間と聞いたりもします。
そういう人は、「もう死にたい」と言って事務所に来ます。だから私は、ともかくその人が希望の持てる方向に持っていくことに全力を尽くします。
この間は、夜の11時にうつ病の女の子から「今からホームに飛び込んで死にます」という電話が掛かってきました。私は、電話をくれてよかったと思いました。慌てて「今から行くから、どこにいるの?」と聞き出し、その子のところに向かいました。その子は私を見ると、ボロボロ泣きました。私は「ちゃんと食事をしている?」と聞き、3日間何も食べていないというその子を食事に誘いました。「おいしい?」と聞くと、「おいしい」と言うので、「おいしいと思えるなら、まだ大丈夫」と言いました。
そんなふうに「死にたい」と言う心の病気の人には、「障害年金というものを知って、私の事務所に来た、そこに私は、あなたの生きようという想いを感じる。だから先のことは、年金が出てから考えましょう」と言います。
本当に「社労士の仕事」のイメージとは随分違うことをされているのですね。でも、松山先生のような社労士が増えたらいいと思います。
最近は、障害年金を専門にしたい、という社労士も増えているようですね。でも、私自身の考えでは、障害年金の仕事は、顧問業務という安定収入があって初めてできる仕事だと思っています。
障害年金は、老齢年金や遺族年金よりは報酬をもらいやすい仕事だと思いますが、今お話したように、決して時間換算して割り切ってする仕事ではありません。労力も精神力も必要ですし、ボランティア精神が必ずいります。
障害年金の仕事だけで事務所の経営を成り立たせようと思ったら、私は体も心ももたないと思います。
だから障害年金を前面に押し出していますし、本当にやりたい仕事も障害年金ですが、収入の一番大きな割合を占めるのはやはり顧問です。でも、この顧問の収入があるから、たとえ万が一マイナスになることがあっても、障害年金の仕事はやっていきたいと思っています。
松山先生は最近、大江戸勉強会などで障害年金のセミナーをされたりもしていますね。大江戸勉強会は申込開始数日で満席になってしまったとか。
それは私もびっくりしました。同業者相手にセミナーをすると、「ライバルを増やすことにならない?」と言われることもあります。でも、私ができる仕事量は限られています。ですから、自分の持っている知識を1人で抱え込むより、多くの社労士に伝え、それがさらに障害年金を知っている社労士を必要としている人たちにできるだけ多く広がっていけばいいと思っています。
先生自身も、札幌の田中東洋治先生のDVDを見て障害年金を勉強されたとか?
そうです。開業したての頃に買って見ました。ただ、実際に手続をする前に見たので、非常に難解でした。何度も何度も見て勉強しましたが、実際に裁定請求をしてみて初めて、「あぁ、田中先生が言っていたのはこのことだったのか。先生、いいこと言っていたんだな~」と分かった感じです(笑) でも田中先生のマスターセットに入っている小冊子は非常に使いやすく、しばらくは毎日鞄に入れて持ち歩いていました。
他にはどうやって障害年金の勉強はされているのですか?
本を読みますね。障害年金の本は新しいものを見つけたら、2冊買って、1冊を事務所に、1冊を家におきます。
障害年金の専門書は難しいのですが、私は本当に障害年金が好きなので、難しければ難しいほど楽しく、「まだ知らないことがあった」と嬉しくなるのです。これが人事制度の本などになると、2,3ページで嫌になるんですけれど(笑)
あと、症状については、話を聞けるお医者さんに教えてもらったりもします。
本当に好きなんですね。ところで、今後、どんな仕事をしていきたいとか、事務所をどうしていきたい、というビジョンはありますか?
ずっと目の前のことばかりで、先のことなど分からない、と思っていましたが、最近ようやく自分の理想が分かってきました。
本当にまだ「理想」なのですが、いずれ、今、自分がやっている3つのメインの業務「障害年金」「創業支援」「顧問」を柱にして、事務所をもっと大きくしたいです。そして、社員を「障害年金チーム」「創業支援チーム」「顧問チーム」と分けて、みんなが何らかのスペシャリストになる、というイメージです。
いいですね。松山先生は、上司としても、仕える相手としても非常にいいと思います。
今はスタッフを1人雇っていて、人の上に立つって難しいなと思いますけどね。
あと、PSRのサービスで使っていただいているものがあれば、教えてもらってもいいですか?
事務所通信は毎月使っています。あと、就業規則のヒアリングシートや、提案ツールは、そのまま使うわけではないですが、「こういう視点で作ればいいのだ」と視点のヒントをくれるものだと思います。助成金のレジュメも助かっています。
色々使ってくださって、嬉しいです。
最後に、開業間もない方にアドバイスなどありましたら教えてください。
開業してすぐはみんな1人だと思います。すぐに人を雇えるわけではないですから。そんな時期のポイントは2つだと思います。
1つ目は、初めに言いましたが、「自分を売ってくれる営業マン」をいかに増やすか、ということ。他士業等と組むのはそういった意味でいいですね。
2つ目は、いつ自分が倒れてもいいように、いざというときには大事な業務が回る仕組みを作っておくことです。ひとつでも顧問先があれば、そこに対して責任があります。私は先輩の先生2人に、もしものときは顧問業務とやり途中の助成金の手続をしてもらえるよう頼んでおきました。
初めは大変でも、ある程度続けていると、紹介だけで仕事が回っていくようになります。
社労士の仕事にはやりがいのある業務も色々とあります。是非、一緒に頑張りましょう。
非常に素敵なお話を聞かせて頂き、ありがとうございました。
社労士の仕事の新たな一面を知った気持ちです。
ビジネスをきちんと成り立たせた上で、社会貢献として年金の業務をするという松山先生のぶれない姿勢に心を打たれました。
これからも頑張ってください!
【2010年3月】
![]() |
第10回 オフィスきよみ 石原清美先生記念すべき第10回は、大阪で「運送業」に特化した社労士として活躍されている石原清美先生にお話を伺いました。業種特化のメリット、特定社労士としての仕事などについてお話いただきました。 |
|---|
![]() |
第9回 森本社会保険労務士事務所 森本裕先生和歌山県で活躍されている森本裕先生に、ブレインまで来て頂きました。毎年「顧問先がちょっとずつステップアップできるための提案」をされているという森本先生に、地方での成功のコツ、育児との両立についてお伺いしました。 |
|---|
![]() |
第8回 株式会社ヒビコレ 稲留達人先生今回は、社労士でありながら、「総務の森」を立ち上げたり、社労士版のSNS(ソーシャルネットワーク。mixiのようなもの)「ヒビコレ社労士」を始めたり、幅広いビジネスを行っている、株式会社ヒビコレの稲留達人先生にインタビューをさせて頂きました。【2010年5月】 |
|---|
![]() |
第7回 松山純子社会保険労務士事務所 松山純子先生今回は、通常の顧問業務に加え、障害年金請求の仕事や創業支援にも力を入れていらっしゃる中野の松山純子先生にお話を伺いました。【2010年3月】 |
|---|
![]() |
第6回 中昌子社会保険労務士事務所 中昌子先生今回は、スーパーのパートから、店長になり、そこで「人を育てる」ことに目覚め、研修会社を立ち上げ、その後、社会保険労務士の資格を取ったという、中昌子先生にお話を伺いました。【2010年2月】 |
|---|
![]() |
第5回 畑中社会保険労務士事務所 畑中義雄先生今回は、有限会社 人事・労務のチーフコンサルタントであり、日本ES開発協会幹事の畑中義雄先生にお願いしました! 1・2号業務は受けず、人事コンサルと労務相談顧問で成功されている先生です。【2009年12月】 |
|---|
![]() |
第4回 フリスコ社労士事務所 桑原和弘先生就業規則や労務相談顧問をメイン業務にしながらも、最近は研修講師としても活躍されていらっしゃる「元プロミュージシャン」の桑原先生にお話を伺いました。【2009年11月】 |
|---|
![]() |
第3回 藤咲コンサルティング事務所 藤咲徳朗先生今回は、茨城県日立市で事務所を開業し、「社員研修」をメインに全国を飛び回っていらっしゃる開業6年目の藤咲徳朗先生に インタビューさせて頂きました。 |
|---|
![]() |
第2回 株式会社 播磨シナジーサポート 畑中伸介先生宮川弘之先生へのインタビューに続く第2弾は、兵庫の畑中伸介先生です。 |
|---|
![]() |
第1回 株式会社H&Iコンサルティング 宮川弘之先生記念すべき第一回は、大阪で成功されている宮川弘之先生です。 |
|---|




























































