第6回 中昌子社会保険労務士事務所 中昌子先生
第6弾で初めて女性の先生の登場です!
スーパーのパートから、店長になり、そこで「人を育てる」ことに目覚め、研修会社を立ち上げ、その後、社会保険労務士の資格を取ったという、とっても元気で、魅力的な先生。
松戸の中昌子先生の事務所におじゃましました。
事務所は北小金の駅から歩いて30秒の距離。
その4階にあります。
扉を開けると、まず目に入るのは、20名ほどが入れるセミナールーム!

その奥に応接室と事務仕事ができる机があります。

普段はこんなふうにお仕事されています!
と書きたいところですが、研修のレジュメ作りや事務的な仕事は夜、おうちでされることが多いそうです。
セミナールームもありますが、実際にはお客様の会社に出向いて研修を行うことのほうが多いとか。でも、社長さんだけを集めてちょっと労基法改正の勉強会をしましょう、とかそういうときに便利だそうです。
応接室のほうでインタビューをお願いしました。

春らしいチューリップがきれいです。もちろん、中先生の笑顔も!
ということで、まずは、社労士になる前のお話から聞かせていただけたらと思います。
短大を出てまず勤めたのは、製鉄会社でした。大きな会社でしたし、その頃はまだ男女雇用機会均等法などはなかったですが、それでも「女はお茶くみ」というような雰囲気はなく、女性でも男性とおなじくらい活躍できる環境でした。ひとりで広島まで出張に行ったり、中国やブラジルの外国船の船長と会って話をしたり、刺激的な仕事でした。
すでに週休2日制でしたし、福利厚生もしっかりしている、振り返ると本当にいい会社でしたね。入社してすぐの研修も、2~3週間かけて、しっかり行なってもらいましたし。
とにかく、毎日が楽しくてしかたなかったです。
でもまだ若かったからか、自分が恵まれた環境にいるということが分かっていなかったのでしょうね。「専業主婦」というのに憧れ、22歳で結婚したあと、子供ができたのもあり、あっさりと辞めてしまいました。
へぇ、そうなんですか。専業主婦になりたかったのですね。ちょっと意外です。
よく言われます(笑) ただし専業主婦になって3年もしないうちに外で活動したくなりました(笑) 子供の頃から、1日中、外で遊びまわっていたタイプでしたから。
ちょうど、育児をしながらできる仕事を始めたいな、と思っていたとき、公文式の英語教師の募集があったのです。英語は得意だったので、とりあえず応募してみたら、運よく採用されました。
生徒たちに囲まれて、楽しい仕事でしたよ。
ただ残念なことに、そのとき夫の転勤があり、かわいい生徒たちを残し、関東に来ることになりました。
こちらに来たのは旦那さんの転勤でだったのですね。その後、すぐにスーパーのパートを始めたのですか?
しばらくはお気楽主婦をしていました。公文式の先生は楽しかったけれど、生徒たちを中途半端な状況で置き去りにしてしまったような気がして、夫の転勤がある限りは、そういう仕事はもうできないな、と思っていました。
とは言っても、子供の学費のこともあるし、少し働こうと思ったとき、友達からスーパーのパートの仕事を紹介されました。はじめは、時給780円からで、週に3日だけでしたから、1ヶ月働いても、5,6万円の収入でした。
でも、お金の多い少ないではなく、仕事が楽しかったんですね。だから、お客様のためにもっとできることはないか、会社のために何かできることはないか、と、目の前の仕事を一生懸命にやっていました。そして、気付いたら店長になっていたという感じです。
はじめから店長になりたいとか、会社を興したいなどということは、まったく思っていませんでした。
目の前のことを一生懸命にやる……大切だとわかっているけれど、なかなかできないことですね。
ベストを尽くしなさいというのは、よく父から言われていました。父は学校の教師でした。もう両親とも亡くなっているのですが、亡くなってからのほうが、両親からは色々なことを教えてもらったと、感謝の想いが湧いてきています。
子供の頃、父から聞いた話の中でも特に心に残っているのが、靴のセールスマンの話です。
アフリカのある国にふたりのセールスマンが行きました。その当時、その国の人はみな裸足で生活していました。それを見た一人のセールスマンは、「誰も靴をはいていない。この国に可能性はない。すぐ帰る」と連絡してきました。でも、もうひとりは「誰も靴をはいていない。この国には大いに可能性がある」と連絡し、しばらくその国に残ったという話です。
私も、後者のセールスマンのように前向きな姿勢で仕事をしていきたいと思っています。
いい話ですね。
研修でもよくこの話をするのですが、私の研修を受けた方には、ひとつでも何か得ていただき、少しでもいいからレベルアップして帰ってもらいたいと思っていつも研修をしています。
店長になってからは、具体的にどんな仕事をされていたのですか?
店長の仕事は色々ありますが、私が一番力を入れたのは、やはり人を育てることです。少し前の自分がそうであったように、特にパートの方には、お金とは関係なく、一生懸命に、献身的に働く人が多いのです。ですから、パートさんを戦力にする仕組みや評価制度を作りました。
また、働きがいのある職場にするために、レクリエーションや社内旅行も企画しました。
お客様に喜んでいただくことも色々考えましたよ。じゃんけん大会やプライベートブランドの商品を企画したり。「店長が行く全国地酒さがしの旅」というコーナーを作り、各地の酒蔵をめぐり、美味しい地酒をさがしてお店で紹介したりもしました。とにかく、スタッフのチームワークがよく、全員で協力してユニークなことをやりました。
店長の仕事は幅が広いのですね。スーパーのひとがどんな仕事をしているか、考えたことがなかったですが、おもしろそうですね。
社長が全面的にまかせてくれる方だったので、やりやすかったです。
I LOVE お店 I LOVE お客様 I LOVE スタッフ という感じで楽しくて楽しくて。毎日、全力投球していました。そのうち、ありがたいことに、他のスーパーの社長さんからも、「うちのパートも教育して欲しい」と依頼があり、私の「人を育てる」というところの活動が周りに広がっていきました。
他のスーパーからですか。「目の前のことを一生懸命やる」ということの威力はすごいですね。
社長のご好意で、「店長」の仕事を「業務委託」契約にしてもらい、仕事の休みのときに、他のスーパーに行って研修をするようになりました。つまり、休みがまったくないような状態がしばらく続きましたが、休みなどいらない、というくらい、仕事が楽しかったですね。
そのときに立ち上げたのが「有限会社マリン」という研修会社です。
先生のされている研修というのは、どういった感じの内容なのですか?
スーパーマーケットの接客研修、レジ研修はもちろん、飲食業、サービス業の接客研修。最近では、IT企業や建設業のコミュニケーション研修、病院の患者接遇研修も行なっています。4月は新入社員研修で忙しくなります。私の研修の大きなテーマは「形」だけではなく、「心」を育てることです。
接客もビジネスマナーもコミュニケーションも、相手を思いやる気持ちが大切です。
ですからすべての研修で、「目配り・気配り・心配り」の話をしています。
目配りというのは、常に周りの人、周りのことに注意を払うこと。「気配り」というのは、相手が期待していることをして差しあげること。たとえば、高いところにある商品が取れなくて困っている人がいたら、とって差しあげるというようなサービスです。「心配り」というのはさらに先をいって、相手が思ってもいないことをして差しあげることです。たとえば、雨が降っているときにスーパーに来たお客さんの服が濡れていた。そのとき、新しいタオルをさっと差し出す、というようなサービスです。スーパーにそんなことを期待しているお客さんはいません。だから、思いもかけないサービスをされて、お客さんは「感動」するんですね。「目配り・気配り・心配り」は、すべての業種に必要とされているものだと思います。もちろん、私たち士業にも。
なるほど。リッツカールトンのCSみたいですね。
ところで、研修会社を立ち上げたあと、社労士の資格を取ろうと思ったのはどうしてですか?
人の紹介など、色々な縁に恵まれ、研修の仕事はたくさん頂いていましたが、自分は大きな研修会社に所属しているわけでもなく、なんの後ろ盾もないということが気になることもありました。
そのとき、資格という裏づけみたいなものがあればいいかな、と思ったのです。
そして、「人」を育てる仕事をしているので、「人」に関する資格がいいかな、と。
実際、社労士の資格を取って、企業の「人」により深く関わっていけるようになって本当に良かったと思います。
今は、研修と関係なく、純粋な社労士の仕事というのもあるのですか?
社労士のほうは、ようやく3年目に入った、という、まだ「新人」ですが、それでもお陰様で顧問のご縁も頂きました。就業規則も、PSRの「就業規則コンサルティング実践塾」を受講し、その知識を活かして、3本作成しました。蓮室先生の「人事コンサルタント養成塾」も大変、為になり、その方法を自分なりにアレンジして、人事制度も作ることができました。基盤人材の助成金の申請もしましたよ。
すごいですね。研修をしながら、顧問業務までするのは大変じゃないですか?
ただ、手続きの顧問は4社だけで、残りは労務顧問です。
それでも事務仕事は増えてきていますから、いずれ、人を雇って、事務的な仕事はお願いしていかなくてはいけないのかな、とは思っています。
お仕事は紹介で入ってくる形ですか?
そうですね。私の場合は、店長時代からの知り合いの方々の紹介がほとんどです。DMを出したり、能動的な営業活動はほとんどしたことがありません。
恵まれているのでしょうね。ありがたいと思っています。
うらやましいです。先生の事務所や会社の今後の展望を聞かせてもらえますか?
プロゼミで北村先生に「おまんじゅうを作りなさい」というお話を伺いました。たくさん種類があるおまんじゅう屋さんは、お客さんが選ぶのに困ってしまう。それよりも、3種類しかないけれど、「このおまんじゅうは・・・です」「こっちのおまんじゅうは・・・です」と明確に中身を説明できるおまんじゅうを売っているお店の方が繁昌する、という話です。
今は、その3種類の「おまんじゅう」を作ることを考えています。
1つめのおまんじゅうはようやく完成しました。
実は、去年の秋「オーナーズ スマイルクラブ」という商品を商標登録しました。
これは人事部などがない小さな会社の人事部を代わりに行ないますよ、という意味合いのサービスです。具体的な商品の内容としては「労務顧問+採用と研修」です。
面接でいい人を採ったり、入社した人がすぐ嫌になってやめないように社内の環境や労働条件を整えたり、「目標になる先輩」を育てたり、労務相談にのったり、そういったこと全般を引き受けるサービスです。
ちょうど先月、新しいスーパーの立ち上げをしたのですが、その会社の組織図に「人事教育担当 中 昌子」と入れていただきました。外部のコンサルタントではなく、常勤はしていないけれど、会社の一員だと思ってもらいたいからです。
なるほど。中先生の場合は、研修講師の仕事と社労士の仕事をうまく融合させていますね。
最近、社労士のなかに研修講師としても仕事をしたいと思う方が増えている気がしますが、どう思われますか?
たしかにたくさんいらっしゃいますね。素晴らしいことだと思います。
研修講師には知識(ノウハウ)とコミュニケーション能力が必要です。
私も一流の講師を目指して、日々努力したいと思っています。
中先生には昨年、PSRで行なった増田啓子先生の「研修講師養成講座」にもご参加いただきましたが、いかがでしたか?
増田先生のセミナーは「気づき」がいっぱいでした。私は研修講師をやっているといっても、自己流ですので、一流の先生から学びたいと思っていました。増田先生からは、「インタラクティブ」な講座の作り方を学びました。一方的に講義をするのではなく、参加者から引き出す講座です。
増田先生の講座を受けてからは、自分の研修でもワークの時間を増やしました。
さきほど、「就業規則コンサルティング実践塾」と「人事コンサルタント養成塾」のお話もありましたが、中先生には本当によくPSRのセミナーに参加して頂き、嬉しく思っています。
やはり学ぶことは大切ですよね。それにPSRのセミナーは、「仕入れ」ですね。学んだら、すぐによい商品をつくり、お客様に提供しなくてはと思っています。
それと、人と会ったり、セミナーに参加するときに心がけていることがあります。それは、人の話を聞くときには、まず自分のコップを空っぽにして聞こう、ということです。自分の思い込みがあったままだと、人の話は素直に聞けません。だから、まず、自分を空っぽのコップの状態にして、そのなかに新しい水を入れてもらうつもりでいくのです。人とお会いするときも同じようにしています。
素敵ですね。
確かに中先生の話を今聞いているだけでも、ご両親からはじまり、北村や増田先生や、出会ったたくさんの人から、いい影響を受けていることが伝わってきます。
PSRのセミナーやプロゼミに参加して、本来なら出会えなかったであろう方ともたくさん出会うことができて、私は幸せだなと思います。
セミナー以外にPSRのコンテンツでは、なにかお使いいただいているものは、ありますか?
事務所通信は毎月使わせてもらっています。使い勝手がいいですね。
あとは小冊子ですね。やはり研修をよくするので、「ストップ! 職場のハラスメント」や「ビジネスマナーの常識と非常識」の冊子は活用させてもらっています。
また、30人未満の会社用の書式というのも便利ですね。
ありがとうございます。
最後に、開業まもない先生などにアドバイスがありましたら、お願いします。
私自身、社労士の経験は2年あまりでアドバイスをさせていただく立場ではありませんが、自分が開業したての頃をお話しすると、「社労士になったんだから、あれもできるようにならなきゃ、これもしなきゃ」と、焦ってしまった時期があるんですよね。そして逆にそれがブレーキになってしまった。
だから、もし、今、そういう状態の方がいたら、まずはご自分の一番得意とされるものを見つけ、ひとつ核を決めると前に進みやすくなるのではないかな、と思います。
それと、はじめのうちはやったことのない仕事ばかりで不安だと思いますが、頼まれたら、断らずにやってみる。やるうちにできるようになりますから。「走りながら、考える」私も日々、自分に言い聞かせながら仕事をしています。
長い時間、素敵なお話を聴かせて頂き、ありがとうございました。
中先生のお話を聞いていると元気なります。先生の研修が人気なのも、とても分かります。
目の前の仕事を一生懸命することや、人の話を素直に聞くことの大切さを私も学びました!
先生も「おまんじゅう」作りを頑張ってください!
【2010年2月】
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